天を衝く槍


そしてアルが取っていた場所は、荒らされた様子もなく、横取りもされてなかった。


――……平和だなぁ…


なんとなく、思った。


そして時計の長い針が午前九時をピッタリを差した時、おばちゃんが食べ物を持って来た。


もちろんお酒とかも。


そして、この席の近くにはさも当然というようにジルがいた。


――…まぁ、カップルだし、当然っちゃ当然か


……いや、当然なのか?


なんて(少しどうでもいいことを)思って、ふと、辺りを見渡すと、桜の木の上に登って徳利とお猪口を片手にお酒を飲んでいるジューシローが目に入った。


――うわ、なんかこういうシーンって漫画にありそう


お猪口に桜の花びらが入って「ウフフ」……みたいな。


そんなことを思っていると、風がブワッと強く吹いた。


木々が揺れて、花が散る。


ここじゃなければ見れない景色かもしれない、と思った。


ジューシローがお猪口に酒を注ぐ。


その時、彼は一瞬手を止めて少し面食らったような顔をした。


そしてフッと口角を上げた。


「…………………」


――本当にあったーっ!!!


私は今、奇跡の瞬間を見たのかもしれない。
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