天を衝く槍
そんなある日のこと。
いつものようにヨースケとの鍛練を終えて、私が自室に戻ろうとエレベーターに乗ると、そこで私は思わぬ人たちと出会った。
「あ、コウガ。鍛練お疲れさま」
「ソンジュさんとフィーネさん?」
エレベーターで偶然出会っただけなのかもしれないが、珍しく二人が一緒にいたのだ。
特に、ソンジュさんがあの部屋から出ているなんて驚いた。
私がAliceに入団してから、今までで一度も部屋の外にいる彼を見たことがない為、自ら出向かないと彼には会えないものだと思っていたのだ。
「ヨースケから聞いたよ、随分と槍の腕が上達したんだって?」
ソンジュさんが嬉しそうに言う。
「はい!おかげさまでロンコーネもフォシャールも一通り扱えるようになりました!」
私はヨースケからその二つの使用許可が下りたときのように、顔をほころばす。
「そっか。じゃぁ、ヨースケから話が上がってきたら任務に行ってもらおうか」
彼はそう言い、私は大きく返事をした。
「ところでソンジュさんは何故ここに?」
私が気になっていることを聞くと、彼は答えずらそうに表情を歪め、目をそらした。
……なにか聞いてはいけないようなことを聞いてしまったのだろうか。
不安が、横切る。
「……聖戦で死んだ弟の命日だから、今日」
蚊の鳴くような声で言い、ふとフィーネさんを見ると、彼は何故か眉をひそめていた。
「ごめんなさい…そうとは知らなくて…」
「……………」
「……………」
それから少しの間、重い空気がこの場を支配した。
上昇していたエレベーターが止まり、チーンと鳴って、「またね」とソンジュさんが手を振りながら降りていった。
扉が閉まり、私は気になったことを思いきってフィーネさんに聞くことにした。
さっきの空気で聞くほど私も図太いわけではない。
「あの…聖戦って……?」
「………………」
一度私に視線を投げかけて、フィーネさんは何か考えるように腕を組んだ。
「……今は知らなくていいよ」
彼はそう言い、微笑んだ。
――知らなくていい
頭の中でこだまする。
私はその時頷いて彼と別れたが、知らなくていいと言われれば知りたくなるもので。
着替えた後に資料室に行くことにした。