天を衝く槍
「ここで何してたの?」
フィーネさんは同じことを私に問いかけた。
そして彼の声音は、この質問は必ず答えなければならないと思わせるものだった。
「……聖戦のことが気になって…」
私は叱られるのを承知で言葉を口にした。
「……………」
しかし彼は困ったように息を吐くだけで、私を叱ろうとはしなかった。
「………………」
「………………」
それから少し沈黙が続いた。
「……その好奇心は、その身をも危うくさせる」
沈黙を破り、彼はポツリと独り言のように言った。
「ソンジュが言ったことについては、調べたり人に聞いたりしない方がいい」
いつもニコニコしているフィーネさんが、今、恐い顔をしている。
それだけ触れない方がいいのだろうか。
「それに任務に出るようになると、嫌でも知るようになるから」
もどかしげな顔をして、だから今は知らなくていいと彼は言った。
「知らない方が幸せな時だってあるでしょ?」
そう言う彼の顔には、頼むからこのことには触れないでくれと書いてあった。
「……はい」
納得がいかないものの、あんな切な気なフィーネさんを見た私はそれしか言えなかった。
『それは記憶にしまって錠をかけ、鍵をあなたにあずけましょう』
ふと、そんな劇中の科白が私の頭に浮かんだ。
「いずれ分かる時が来るのなら、貴方に預けた鍵で錠を外してください」
言うつもりはなかったが、言葉が口から出ていってしまった。
フィーネさんは一瞬眉根を寄せたが、すぐに私が言った言葉を理解したのだろう。
分かったと言い、彼は微笑んで資料室から出ていった。
それから二年後、鍵をかけられた私の錠は外されることとなる。