天を衝く槍
それから2日後。


「あ…あげる、これ…」


私たちがいつものように昼ごはんを食べ終わった後、談笑していると、そんな女性の恥じらう声が隣から聞こえた。


私たちが声がした方を見ると、女研究者が男研究者にピンク色にラッピングされているものを渡しているところだった。


「俺らのは?」


それを見たギルが目をキラッキラさせて私とアルを見る。


まるでハロゥウィンの時に、子供が家を訪ねてお菓子を貰えるのを今か今かと待っている時のようだ。


私とアルは顔を見合わせてクスリと笑い、イスの下に隠していたケーキを取り出す。


「心配しなくてもちゃんとありますよ」


私はそう言い、一人一人に配った。


「……これ、何?」


シロさんが訝しげな表情で、ラッピングされている四角い立体な黒い物体を取り出し、聞いた。


「腐ってるわけじゃないよね?俺らに怨みとかないよね?」


「あるわけないじゃないですか」


どうやらギルには、その黒い物体の上にかかっている白いものが白カビに見えたようだ。


「白いのは砂糖で、これはシュトレンっていうケーキ」


アルが言うと、ギルは驚いて私の方を見る。


「え!!?これケーキ!!?マジで!!?」


「マジです」


「四角いのに?」


「四角いのにケーキです」


「カビっぽいのに?」


「だから砂糖ですってば」


「イチゴ乗ってないよ?」


「イチゴが乗ってないケーキもあるんです」


「え~嘘だぁー」


「何で信じてくれないんですか」


中々信じてくれないギルに、私は半目になった。


「だってこんなケーキ見たことないもんな?――って、うぉい!なに三人して勝手にさっさと食べてんの!!?」


ギルがジルとシロさんとフィーネさんに話を振るが、彼らはギルが私と話している間にさっさとケーキを食べていた。


「おいしいよ?」


「俺もたべる!!!」


フィーネさんが言うと、すぐさまギルが持っているケーキにかじりついた。



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