天を衝く槍


「……で、俺のは?アル」


ジルの発言で、私を含む四人の視線が一気にアルに集まる。


フィーネさんはまたいつの間にか、いなくなっていた。


アルは無言で少し頬を赤らめながら、小さな黄色にラッピングされたものをジル渡した。


「さんきゅー」


それを受け取った彼はるんるんで自室に戻って行き、アルは照れたように笑った。


―—青春だなぁ…


そんな和やかな風が吹いたのも、束の間。


ジルの姿が見えなくなって、アルは一人、急に「くくくっ…」と笑いはじめたのだ。


「……え…ちょ、どうした?」


ギルが半笑い、且つ、不思議なものを見る目をして聞く。


「実はあん中、ギルに教えてもらったクッキーが入ってんだよ」


ニヤリと笑ってアルが言った。


「…え?」


ギルが一瞬、キョトンとした表情を見せ、引き攣ったような笑みを浮かべる。


「………………」


……引き攣った笑い顔が彼に似合うのは何故だろう。


私はそう思いながらぼんやり彼の顔を見ていた。


< 82 / 294 >

この作品をシェア

pagetop