ブラック王子に狙われて②
丁寧な口調で言ったくらいじゃ反応しない二人組。
さすがの俺も、イラっと来た。
だって、絢の表情がみるみるうちに激変して……。
「邪魔だって言ってんだよっ、聞こえねぇのかよ?!」
こういう時は柔らかい物腰のユウよりも
俺の方が役に立つというか、こういう役回りは俺の出番。
女二人を一瞥して、
「何付けたらそんな匂いになんの?香水付けすぎだろ。暑いのに匂いが籠ること考えろよ」
俺は捨て台詞を吐いて、ユウの腕を掴んで
二人の間を割ってその場を後にした。
「悪い、お待たせ」
「ごめんね。ちょっと声掛けられちゃって」
ユウ、そこはあえて触れない方がいいんだって。
ほら、見てみろ。
ゆずちゃん、めっちゃ怒ってるぞ。
ってか、絢もだけど。
「ゆずの浴衣可愛い♪絢ちゃんもよく似合ってるね」
「「…………」」
絢とゆずちゃんは手を握り合って、プイっと顔を逸らした。
相当不安にさせてしまったようだ。
「とりあえず、行こうか」
「そうだな」
俺らはそれぞれの彼女の手を掴んで、改札口へと向かった。