ブラック王子に狙われて②


金曜日の夕方という事もあって、

サラリーマンやOLも多くて、電車内は大混雑。

絢が痴漢に遭わないように、更にドア角に移動させて。


「ん?……何?」


俺を仰ぎ見た彼女が何か言ったのが聞き取れない。

腰を折るみたいにして、彼女の口元に顔を近づけると。


「ありがとっ」

「フッ、当然だから、気にすんな」


ガードされたのがお気に召したようで。

さっきまでの出来事が上書きされたっぽい。

満員電車ですし詰めの電車内。

サラリーマンの煙草臭い匂いが鼻をつく。

隣りのオッサンの視線が絢のうなじや胸に落とされたのを確認した俺は、

さっきみたいに僅かに腰を折って絢の首に顔を近づけて。

無防備のうなじに容赦なく吸い付く。


「ッ?!//////」

「痴漢対策」

「///////」


俺の行動に驚くオッサンに鋭い視線向けて。

絢は照れて恥ずかしいようで、俺の胸におでこを預けた。


誰が見てようが気にしねぇ。

俺の大事な絢を変な目で見るのも

もちろん触れるのも、ご法度。

この俺ですら、触り放題なんじゃないんだから

軽く扱われちゃ、俺の気がおさまらねぇ。

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