ブラック王子に狙われて②


振り返らなくても分かる。

絢の視線で。

どこの誰だか知らない人が、

俺らのことを見てるんだって……。


「絢」

「何」


ほらね。

速攻で不機嫌全開。

俺、何もしてないのに。

むしろ、絆創膏貼って、

ご褒美貰えるんじゃねぇの?こういう時って。

チラッと絢の視線の先に視線を向けたら、

浴衣の袖部分に物凄い重力を感じた。

ゆっくりとその場所へと視線を降下させると、

震え気味の手で、俺の袖をぎゅっと握りしめる。

めっちゃ可愛いっっっっ。

たかが噂されてるくらいで、何この嫉妬。

やべぇ、頬が緩みっぱなしかも……。

口元を押さえて顔を横に向ける。

まともに絢を見れねぇ……。


「ん?」


袖がツンツンと下に引っ張られた。

何か言いたい事があるらしい。


「どした?」

「これ、貸して?」

「ん、いいけど」


帯部分に挿してある俺の扇子を抜き取った絢。


「これ、ちょっとこうやって持っててっ」

「扇子をか?」

「ん//////」


暑くて扇ぐのかと思いきや、俺に持たせたいらしい。

俺は絢の言われるままに扇子を広げて持っていると……。


「んっ?!!!!」

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