ブラック王子に狙われて②
「えっとね。……教えて貰わなくてもいいとか言うんじゃなくて、慧くんの邪魔はしたくないから。だから、分からない所を教えて貰えれば……」
「………却下」
「え、何で?」
「分かってると思ってる所が間違ってたら?誤学習した状態で先に進むだろ」
「………それはそうかもだけど」
「それに、俺が絢に教えることで復習にもなるから、気にするな」
「でも……」
復習しなくても、慧くん平気じゃない。
私を気遣ってくれた言葉だって分かる。
「ってか、何か?俺と一緒に勉強したくないって遠回しに言ってんのか?」
「あ、いや、それは全然ちが「絢の全てを把握したいから、これ以上の議論は受け付けない」
「っ/////」
熱の籠った視線を浴びては反論する言葉が見つからない。
「行くぞ?」
「…んっ」
信号が青になり、彼に手を引かれて横断歩道を渡る。
コートの裾がはためいて、微かに風に乗ってシトラスの香りが届く。
少し前までは肩を並べて歩いていたのに
最近、彼は私の1歩前を歩く。
たぶん、彼が風よけになってくれているみたい。
11月に入り、だいぶ空気が冷たくなって来たから……。