ブラック王子に狙われて②
駅ビルの中のショップをぶらぶらと廻り、
私が『可愛い♪』と見惚れていたヘアクリップを買ってくれた。
「これ、ご褒美券、消費しないよね?」
「フッ、しねぇよ」
「よかったぁ♪慧くん、ありがとっ」
「どう致しまして」
最近、どうしたんだろう?
慧くんから毒がすっかり抜けてる気がする。
去年の彼は、毒毒毒毒毒と、常に毒素満載だったのに。
今の彼は至って普通の男子高生だよ。
「何、その目」
「え?」
まじまじと見つめているだけなのに
やっぱり心の最奥を見透かしているみたい。
何気ないことでも、些細なことでも。
彼はいつだって私を見ているみたいで。
それが、思いのほか擽ったくて。
慧くんママの知り合いの人が経営しているというカフェでお茶して。
書店で参考書を吟味したり、有名なクレープ屋さんに並んでみたり。
ごくごく普通のデートをして、夢のようなひとときを味わう。
冬の日没は早くて。
夕方になると、すっかり藍色に染まった空。
一層空気が冷たくて、空いてる方の手に息を吹きかけた、次の瞬間。