ブラック王子に狙われて②


首元を覆うスヌードが抓み上げられ、

彼の温かい手が、空いている方の手を包み込んだ。


「絢の手、めっちゃ冷たい」

「っ/////」


駅ビルから出てすぐのところで。

彼が足を止めたから、私まで足が止まる。


繋がれてる手が解かれ、

ちょっぴりその場所に寂しさを覚えて、

彼の手の行方を無意識に追うと。

彼は自身のコートのボタンを外して―――。


「んっ?!//////」


コートで包み込むみたいに私の体を引き寄せた。

私の手をコートの中を伝って彼の背中へと回されて。


クリスマス・イブの夕方の駅ビルの入口。

物凄い人がいるというのに、

彼は澄ました顔で私を抱き締めている。


彼の胸に埋もれる私は、

外の様子が全くもって分からないんだけど。

だけど、それも計算した上でなのかもしれない。

私が恥ずかしがると思って。

身長差があるから、すっぽりと彼のコートの中に隠れられている。


「あったかい/////」

「当たり前だろ」

「慧くん……大好きっ/////」

「フッ」


彼の鼓動が、いつもよりほんの少し早い気がして

ちょっとだけ嬉しくなったりする。

彼も普通の男の子なんだと。

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