ブラック王子に狙われて②
期末試験4日目の放課後。
「神宮寺くん、ごめんね?」
「……ん、いいから早く解いて」
「うっ、うん」
クラスの女子が分からない所があるからと
涙目で訴えるから、仕方なく教えてあげたけど。
もう、20分くらい経ってんだけど。
早く絢を迎えに行きたいのに、
目の前のコイツは、『う~ん、う~ん』と唸り始めた。
これ、わざとなんじゃね?
たまにいるんだよな。
絢と付き合ってるのを知ってても、
こんな風に勉強教わりたいだの、
2人きりになりたいだの、ほざく奴が。
「悪いけど、もういい?」
「え?……明日試験だから……」
んなことは分かってるよ。
だから、絢の元に行きたいんじゃん!
お前の成績がどうなろうと、知ったこっちゃねぇよ。
絢の勉強を見てやりてぇのに、邪魔すんな。
学校では王子様的存在の俺は、未だに仮面を被ってる。
だから、下手に毒も吐けないし、無視も出来ない。
めんどくせぇな。
「ちょっと貸して?」
「えっ?」
俺は目の前の女からノートを取り上げ、
計算に使う公式を上段に書いて四角で囲み、
その下に分かりやすいように丁寧に計算を記して。
左右の余白に注意点をざっと書いてノートを差し出す。
「これで分かると思うから」
俺の態度に驚くような素振りを見せる女を尻目に教室を出た、その時。