ブラック王子に狙われて②
「ただいまぁ」
「お邪魔します」
自宅に到着し、玄関で靴を脱いでいると、
リビングから母親がひょっこり顔を出して来た。
「おかえり~。慧くん、いらっしゃい」
「あのっ、ちょっとお話があるんですけど……」
「え?」
「あら、改まって。話って何かしら??」
思わず隣りの彼を仰ぎ見てしまった。
すると、彼はにこっと王子スマイルを返して来る。
……別れたいとでも言うのだろうか?
突然、前触れもなく改まって母親に話があるという流れが
今の私の心を掻き乱す材料なのは間違いない。
「何、泣きそうな顔してんの」
「っ……」
「期末試験の話じゃないから、安心しろ」
じゃあ、他に話すことって何?
不安と安堵とが織り交ざってる複雑な心境。
優しく頭を撫でられた。
リビングのソファーに腰を下ろすと、
母親が冷えた麦茶をテーブルに置く。
「ありがとうございます」
隣りに座る彼が、母親にペコっと頭を下げた。
そんな動作を他人事のように視線に捉えて……。
「話って何かしら?」
ソファーに座った母親は、慧くんを真っすぐと見据えた。