ブラック王子に狙われて②
・一撃必殺
昨夜、絢の両親に夏休みの意向を正式に申し出た。
でなければ、進学先をじっくり見て決める時間が無て、
入学する時期を少しずらして対応しなければならなくなる。
この俺にとって、そんな無駄なことはしたくない。
俺と絢の将来のことなのに、
いつも彼女は少し後ろ向きで。
まぁ、分からなくはないが、
いい加減腹を据えて、しっかりと考えて欲しい。
今すぐ入籍するわけでもないのに、
『将来』というワードですら、身構える有り様。
帰りのSHRが少し早めに終わり、
絢を迎えに東棟に向かう。
「キャァァアア~~ッ!!」
「神宮寺くんっ、さようなら」
「さようなら、気を付けて帰ってね」
「「キャァァ~~ッ、カッコイイ~ッ!」」
挨拶する女子に似非スマイルを贈呈して、
足早にその場を立ち去る。
耳に劈く声が、本当に嫌で堪らない。
近くにいるのに、何故あんな大声をだすのだろうか?
お淑やかに『ごきげんよう』と挨拶すればいいものを。
イラっとしながら、絢の教室のある東棟の階段を上がる。
上から次々と下りて来る生徒を避けながら……。