ブラック王子に狙われて②
足早に視聴覚室方面へと向かう。
絢の教室を通り過ぎて、突き当り手前の渡り廊下を進む。
再び角を曲がろうとした、その時。
「だから、何であいつなんだよっ」
「何でって、好きだからに決まってるでしょ」
「好きって……。俺の方がずっと前に知り合ってるし、俺の方が何年も一緒にいたじゃん」
「出会うのが先か後かだなんて関係ないし、何年一緒にいたって、友達は友達だし、幼馴染は幼馴染だよ」
アイツと絢の声が耳に聞こえて来た。
思わず足を止めて、様子を窺う。
「何で、そんな冷たい言い方すんだよ」
「冷たい?……これが素直な気持ちだし、ありのままだよ」
完全に告白の域を越してる。
絢に振り向いて欲しくて、
なりふり構わずな感じが伝わって来る。
俺が奴の立場だったら、どうしてただろ?
不意にそんな事が脳裏を過った。
「引っ越す前に俺が言った言葉、覚えてるか?」
「引っ越す前?……分かんない」
「それまでも、何度も口にしてたけどさ。引っ越す前の日に言った言葉はマジで本気だったんだけど」
「……だから、何て言ったのよ……?」
奴の言葉に嫌な予感がした。
男の勘というやつだと思うけど。
胸の奥から警告音が鳴り響いてる。