ブラック王子に狙われて②
絢にしては珍しく嫉妬をしてくれたようで。
さっきから薬指に収まる指輪を指先で撫でている。
浮気するつもりはないけど、
王子様キャラ被り続けてるから、必然に女の子は寄って来る。
それ自体が、彼女にとって負担なら取り除いてあげなくもない。
俺にとっても最大のメリットでもあるし。
「けど、婚約したら、別れるのに慰謝料発生するけど、いいの?」
「えっ?!」
何、その顔。
めっちゃ驚かれると凹むんだけど。
視線が逸らされ、何故か真剣な顔つきに変わった。
「……慧くんっ」
「ん?」
「別れたいの?」
「は?」
「いつか、……別れるかも……と考えてるってことでしょ?」
あぁ~そういうことか。
そういう意味で言ったんじゃないのに。
「いや」
「……え?」
「絢が、俺に対して疲れ切ってしまう日が訪れるんじゃないかと思っただけ。けど、一つ返事で『別れてあげる』とは言うつもりはない。ってか、手放すつもりは微塵もない。俺、相当な強欲だからっ」
「っ//////」
「別れたいって思っても、簡単に別れられなくなるから、覚悟しろ」
「はいっ//////」
別れる時の話してんのに、俺らめっちゃ笑顔。
まぁ、実際に別れ話なんじゃなくて、その真逆なんだけど。
絢の満面の笑顔が、俺のささくれ立った心を隅々まで癒してくれた。