ブラック王子に狙われて②
極めつけは、170センチはあろうかという長身に
ほっそりとした長い脚。
ボディラインがはっきりと分かるサマーニットのセーター。
見るからに色気が漂って来る。
しかも、ママさん同様、流暢に話す彼が気に入ったのか。
優しい笑みを彼に向けている……。
何だか、嫌な予感しかしない。
こういう人がいるって分かってたら、
絶対了承しなかったのに……。
嫉妬心を掻き消そうと、唇を噛み締めて
彼の背中をじっと見据えていた、その時。
後ろ手に彼が手を差し出して来た。
……私の不安に気付いてくれたのかな?
その手をそっと掴む。
だって、それ以外に私に出来ることなんて何もない。
スレンダー美人の彼女の父親だという所有者の男性と
慧くんママが何やら楽しそうに会話していて。
時折、慧くんも相槌をしている。
……私、完全に場違いの場所にいるみたい。
「んっ……」
無意識にぎゅっと握っていたようで、
彼は安心させるためなのか、
私の左手薬指に収まる指輪ごと優しく指で撫で始めた。
そんな優しい彼の態度にやさぐれた心の棘がほんの少し削ぎ落された、次の瞬間。
繋がれている手が引き寄せられた。