ブラック王子に狙われて②


母親にキスを阻止され、

絢は照れて、俺の背後に隠れた。


「絢ちゃん、そんな隙だらけだと、大学3年で卒業出来ないわよ?」

「えっ?!」


要らぬことを吹き込むな!

言葉のまんまに取るだろうがっ!


イギリスの大学は3年制。

日本より1年繰り上げて学習がスタートし、

16歳までに中等教育修了試験 GCSE(国家試験)を受ける。

これに合格しないと、高卒扱いにもならない厳しい国だ。

来週の中間試験を終えたら、

俺らはこのGCSEを特別措置で受けることになっている。

俺らが希望する大学からの留学向けの選考試験だ。


俺のYシャツを掴む絢。

母親の言葉で不安になったようだ。

ったく、余計なことをしやがって。


「慧、……男には、時として乗り越えねばならない試練がある」

「知らねぇよ、んなことっ」

「絢ちゃん、……可愛すぎるのも問題だわっ」


俺の手からカップを受け取り、

手際よくハーブティーを淹れてくれる。

そんな母親を完全ロック状態で視線を固定していると、


「少しは自制しなさいよ?大事なお嬢さんなんだから」

「分かってるよ、……言われなくても」

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