ブラック王子に狙われて②
数日後。
俺の自宅に到着し、いつものルーティンをこなす。
母親は友人と観劇しに行ってるらしく、
ロールケーキにメモが貼られていた。
「お湯沸かすから、好きなの選んで」
「はぁ~い」
絢は迷うことなく茶葉などが入った引き出しを開ける。
だいぶ前から夕食作りを母親としていることもあって、
キッチンの引き出しの中の物の位置とか、
調理器具の収納場所とか、絢は熟知している。
それでも、あからさまに我が物顔で仕切ったりしない彼女に
うちの母親も偉く感心したようで。
ますます彼女のことが気に入ったらしい。
女性にとってキッチンは、
戦場のような秘密基地みたいなものだから
そこを占領されたくないと無意識に思うらしく。
けれど、『絢ちゃんなら』と、
母親は彼女にお墨付きを付けたくらい溺愛している。
自室に上がると、ホットカーペットが設置されていた。
当然、嬉しがる絢が視界に映る。
「ご褒美券、貯めるつもり?」
「え?……ウフフッ」
「何、その不敵な笑い」
「来年以降にきっと必要になると思って、貯金しとく」
「マジで?」
「うん。絶対、今年より来年必要になると思うもんっ」