ブラック王子に狙われて②
以前は、目の前の倖せを見ていた彼女が、
俺同様に、先をしっかり考えるようになった。
「あっ、でも。……1つだけ、消費したい」
「……何?」
「えっとね……」
何、その顔。
いつもなら、俺の顔色伺いながら口を開こうとするのに。
何故、瞳を輝かせて俺を見る。
脳内で絢の考えを読み解こうとした、その時。
「『SëI』のニューシングルが欲しい♪」
「……は?」
「だから、来月発売のCDが欲しいのっ」
また、奴かよ。
ってか、ダウンロードすりゃあいいじゃん。
わざわざ俺に頼まなくたって……。
わざと当てつけ?とか要らぬことを考えてしまう。
「ダウンロードじゃダメなの?」
「うん、集めてるから……」
んだよっ。
それって、手元に大事に取っておく的な意味じゃん。
部屋に飾る飾らないは置いとくとして。
引き出しの中だとしても、
俺以外の男が部屋に住み着いてるってことだろ。
なんか、無性に腹立って来た。
「ダメ?」
うぅっ……。
それ、卑怯すぎんだろっ。
好きな女からの『ダメ?』攻撃。
無条件でノーカウントでOKだって知ってるくせに。