ブラック王子に狙われて②
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「絢、ちょっと散歩に行こうか」
「え?……あ、うんっ」
年末年始は俺の家が所有する南紀白浜の別荘で過ごしている。
12月30日~1月3日までの5日間。
俺らと両家の両親だけという、
ちょっと緊張するようなメンバーだけど。
こうして両親にもオープンに接して貰えると、マジ助かる。
本当は、春から遠くで暮らす娘との時間を
ゆっくり過ごしたいだろう、絢の両親。
だけど、それを表に出さないあたり、本当に尊敬する。
絢の父親は見た目は結構厳格な父親っぽいけど、
お酒が入ると結構お茶目で、
美人な妻にデレデレなのが一目で分かった。
テーブルの下に落ちたナフキンを拾おうとした時、
テーブルの下で妻の手を握ってるのが可愛らしくて。
年を取ってもあぁいう初々しい関係性でいたいなぁと思えた。
砂浜をゆっくりとした足取りで散歩する。
小さな白波と海面に浮かぶ月。
俺の手の先にある絢の手のぬくもり。
今感じてるこの一瞬が倖せ過ぎて。
「絢」
「ん?」
「俺に直して欲しいとこ、あるか?」
「へ?……別に、無いよ」
「本当に?」