ブラック王子に狙われて②
1月中旬の土曜日。
放課後、絢の自宅で年度末試験に向けて勉強している。
大学へと進む同級生たちの殆どはセンター試験真っ只中。
俺と絢は既に留学先の大学の合格通知が届いていることもあって、
年度末試験に向けて勉強に専念出来るんだけど。
何故か、俺の隣りにいる彼女は上の空。
来月発売される『SëI』のニューシングルの先行予約が
今日の正午から開始されるらしくて。
正午3分前。
10分ほど前からスマホを握りしめてる。
何でも、初回限定特典のステッカー入りが欲しいらしい。
しかも、そのステッカー入りのが、
初回出荷数量が1万枚とかなり貴重らしくて。
1万もあったら買えそうな気がするけど、
先月のCDは初回出荷枚数が45万枚だったそうで。
今時、ダウンロードに移行しつつある音楽業界で
異例中の異例とも言える売り上げを叩き出しているらしく。
………気に喰わねぇ。
もしかしたら、めっちゃオッサンかもしれないし。
声は男性っぽいけど、かなりキーの高い曲も歌いこなすから
もしかしたら、女性かもしれないし……。
けど、絢はそんなこと全然気にしてない素振りで。