ブラック王子に狙われて②
「慧くん、パスタなんだけど、大丈夫?」
「あ、はい。ママさんのパスタ、美味しいんで」
「あら、やだっ……おばさん、照れちゃうじゃない」
絢ママから『お昼ご飯だよ~』と声がかかり、
2階からダイニングに下りて来たのはいいけど。
絢はさっき無事に予約が取れた画面をスクショし、
それを宝物のように眺めてる。
絢の母親がいる前であからさまに嫉妬するとか
ちょっと、いや、かなり嫌なんだけど。
さすがに小一時間も俺以外を想い続けてるとか、マジ拷問。
そろそろ現実に引き戻していい頃合いのはず。
「ちょっとッ、やだっ、返してっ!」
「いい加減にしろ」
「何の話?」
「コイツ、捨てるぞ?」
「は?……ちょっと、返してってばっ」
「どうせ新しく買い替えるんだから、壊れたって問題ないだろ」
「あるよ!大アリだよ!!何言ってんの?」
絢の手からスマホを取り上げ、
彼女が背伸びしてもジャンプしても届かないように高々と掲げて。
「絢、慧くんに嫌われるわよ?」
「へ?」
「昨日も今朝も、ずっと『SëI』のことばっかりじゃない。愛想尽かされるわよ?」
「ッ?!!」
「分かった?」
「………ごめんなさいっ。反省するから、返して?」
「食べ終わったらな」
「っ……」