ブラック王子に狙われて②
地下鉄の入口の階段の横で立ち止まる。
同じ高校の制服を着ている子がすれ違う中。
腫れ上がった瞼にキスをする。
涙を唇で掬って。
頬にも優しく口づけて。
頼むから泣き止んで。
じゃなきゃ、俺が泣かしたみたいで
絢の家に行きづらいじゃん。
例え、俺が原因で泣いたわけでなくても。
俺のコートを掴む手に力が込められた。
俺の行動の意味が漸く出来たようで、
しゃくり上げながらだけど、小さく頷く絢。
「俺らが別れるって噂が立ちそうだから、マジで泣き止んで」
「……んっっ」
同じ高校の制服を着た子達がひそひそと話しながら俺らを見てる。
マジで変な噂立てんなよなっ。
絢に変な男が近寄って来たら、マジで耐えられないんだけど。
「絢の好きなクレープ屋さん、寄ってやるから」
「ふぇっ?……ぃぃのっ?」
「ん。……その代わり、『SëI』に入れ込むのは止めろ」
「っ……はいっ//////」
絶賛反省中の彼女に、追加オプションをする腹黒さ。
勉強を頑張るだけじゃなくて、奴を遠ざけておかないと。
また俺を差し置いて夢中になりそうだもん。