ブラック王子に狙われて②
「ただいまぁ~」
「お邪魔しま~す」
玄関で靴を脱ごうとする絢の鞄を取り上げて、持ってやる。
「クレープの中身、落ちるぞ」
「あっ、……ありがとっ」
自宅の玄関でも、脱いだ靴を揃え直す絢。
幼い頃からの躾がしっかりと身についている。
「おかえり~」
絢の母親が2階から下りて来た。
「絢、泣いたの?目が腫れてるじゃない」
チラッと俺に視線を寄こして来た。
絢は言いづらいようで視線を足下に移すように顔を伏せた。
「今日、試験結果が返って来たんです。……それで」
「あぁ……なるほどね」
「まぁ、進学には差し支えないですし、クラス順位はキープ出来てるので、責めないでやって下さい」
「有難うね。ホント、気遣いに救われるわ」
やっと泣き止んだ彼女がまた泣きそうで。
嬉し涙なら何度だって見たいけど
責めるほど順位を急降下させたわけじゃない。
想定内での結果だから、さすがにこれ以上は。
「クレープ食べてるので、飲み物だけ頂けますか?」
「部屋に持って行くわね」
「……絢?」
「……はい」
絢は鞄から試験結果を母親に差し出した。
絢の背中を階段へと押し出すと、
絢は無言で階段を駆け上がる。
母親に会釈し、階段を上がろうとした、その時。