ブラック王子に狙われて②

・自分が蒔いた種



高校3年の3学期の年度末試験で、

見事に失態を犯してしまった。


2年半にも及ぶ勉強を教えてくれた慧くんに

恩を仇で返すような真似を。


試験を受ける度に、みるみる成績が上がり

予想を遥かに超えるスピードで結果を叩き出し、

周りからも羨ましがられるほどで。

だから、有頂天になっていた。

自分だけの力で這い上がったわけじゃなく

『神宮寺 慧』という人物によって

今までの産物を得られていたことをすっかり失念して。


自惚れていた。

手に取るように答えが分かったり

問題を最後まで読まなくても

問題の意図が読める優越感に。


それら全てが、

積み重ねられた努力の上に築かれた道だということを。


彼のこれまでの努力を

私は踏みにじるような真似をしてしまった。

順位が何位なのかというよりも

試験に対して、勉強に対して、

そして、その先にある将来へと進む道自体を

簡単に捉えていたんだと思う。


両親に対しても『責めないでやって欲しい』と

彼は、私を責める事すらせずに庇ってくれた。


その言葉でさえ、分不相応なのに……。


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