ブラック王子に狙われて②


「ここに座れ」


腕組してるから、顎で指示を出すと

怯えながら俺の元に歩み寄る絢。


喧嘩したいわけじゃない。

怒り散らして殴ろうとか思ってるわけじゃない。

さすがの俺だって、

大好きな彼女に暴力は振れねぇ。


けど……。

この怒りと焦りと、

何とも言えない恐怖感は治まりそうになくて。


俺の横にちょこんと腰を下ろした絢は、

膝の上で両手をぎゅっと握りしめ

その手の上にポタポタと涙が零れ落ちる。


「誰に?」

「……分からない」

「分からないわけねぇだろ」

「ホントに分から……」


俯いてて彼女が、ピタッと言い噤んだ。


「あっ!!!!もしかして……」

「何、……思い当たる節でもあんのかよっ」


視線を泳がせ、必死に記憶を辿ろうとする彼女。

十数秒して、パッと顔を上げた。


そして、物凄い勢いで俺の顔を仰ぎ見た彼女は

ぶわっと再び泣き出し、俺の胸に抱きついて来た。


「ぅ゛ぅっわぁぁぁあああんっっ」

「何だよっ……」

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