ブラック王子に狙われて②
絢の自宅へ向かう道中に、
絢に『全権俺に委ねろ』と話してある。
絢のことだから、
幼馴染だからとか、知り合いだからとか
心優しいことを抜かしそうで。
そんなこと知ったこっちゃねぇ。
この俺様の心中察しろや。
怒り狂う心境をメチャクチャ我慢してるんだからな!
絢のブラウスの襟を抓んで
母親に見えるようにそっと襟を広げた。
「えっ?!……何、……どうしたの?」
「どうしたじゃなくて、何で?だと思いますけど」
絢の母親に対しても、
優しい声音で話し掛ける余裕はねぇ。
だって、常識で考えて
年頃の娘を大学生の男と部屋で2人きりにするのはありえねぇ。
つーか、それを仕込んだの、アンタだろ。
「言っときますけど、俺じゃないですから」
「わ、分かってるわ……」
「さっき、絢から家庭教師の件、聞きましたけど」
「……うん」
「勉強なら、俺が教えるんで」
「えっ、でも、慧くんだって勉強が「家で復習しなくちゃならないほど、落ちこぼれてませんから」
「っ……」