ブラック王子に狙われて②
「ん?」
「……慧くん」
「どした」
「背、……伸びた?」
「あ?」
「なんかね、歩幅が合い辛い」
「あっ、悪ぃ」
信号待ちで立ち止まった私達は
自然と視線が絡み合い、
なんかちょっと、気まずい雰囲気。
彼に、歩幅を合わせて欲しいだなんて、
口が裂けても言えない。
手を繋いで隣りを歩いてくれるだけで満足だもん。
私がちゃんと彼の歩幅とスピードに合わせたら済むこと。
「ごめんねっ、気のせいだと思「伸びた」」
「え?」
「だから、背が伸びたって言ってんの」
「何センチくらい?」
「この1年で6センチ」
「ろっ、ろ、……6センチ?!」
「ん」
元々足が長いだけでなく、背も高い彼。
ゆず情報だと、去年の時点で176センチ。
それから6センチって……。
何食べたらそんなに伸びんの?!
この間、ユウくんと2人でスニーカーを買いに行ったらしくて。
新宿でモデルのスカウトされたって言ってた。
そりゃあ、スカウトされるでしょ……。
今でも遠い存在なのに
ますます彼との距離を感じてしまった。