ブラック王子に狙われて②


電車で数駅離れた複合施設へとやって来た私達は、

次々とショップを廻り、色んなものを買い集めた。


「えっ………」


目の前のショップというか、コーナーを前にして足が急停止した。

だって、だって……。


「絢?」

「無理むり……ゆず、私無理だから」

「大丈夫だって」

「全然大丈夫じゃないからっ」


目の前に広がるのは、水着コーナー。

7月に入り、夏休み直前という事もあって

催事コーナーに設けられた水着ブースは人だかり。


「絢」

「慧くん、帰ろ?」

「あ、それなんだけど……」

「……何?」


視線を泳がせた彼。

こういう時は必ずと言っていいほど嫌な展開になる。


「俺のお願いごと、今日言うって言っただろ、昨日」

「………」


え、なんでそれ今言うの?

まさかとは思うけど、

このブースに関係してるとか言わないよね?


「ユウの彼女に頼んだから」

「は?……どういうこと?」


お願いごとって、私に対してじゃないの?

え、えっ、なんでゆずにお願いごとするの?

脳内がチンプンカンプンになった、次の瞬間。

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