ブラック王子に狙われて②
Ⅲ 倖せと危険は隣合せ
・スタンバイOK
待ちに待った夏休みに突入し、
部活もしてない俺と絢は、
お互いの家を行き来して宿題を進めている。
「慧くんの宿題、凄い量だね……」
「ん、まぁ、どこも特進タイプの科なら普通じゃね?」
「えっ、そうなの?」
確かに、絢の量に比べたら倍以上はある。
けど、中身はそんなに難しくない。
毎日ちゃんと授業聞いてたら簡単だろ。
「やっぱり、頭のいい人は違うんだね」
「絢だって、だいぶ成績上がったじゃん」
「慧くん様さまだから」
「それでも、投げ出さずやり切ったんだから実力だろ」
「そんなこと言うの、慧くんくらいだよ」
はにかむ絢は緑茶を口にしながら、
数学のプリントを解き始めた。
「なぁ、大学とか進路決めたか?」
「まだだけど」
「んじゃあ、将来の夢とかは?」
「何も決めてない」
だと思った。
前々から、やりたいものが無いとずっと言ってるから。
「俺と同じ大学に行くか?」
「はっ?!無理ムリむり無理、頭良くないし、私立の大学でも厳しいと思うからっ」
「そうか?……俺の見立てじゃ、そこそこの大学に行けると思うけど」