ブラック王子に狙われて②
・忘れられない夜
沖縄旅行3日目。
絢は今日が何の日なのか、覚えてるだろうか?
瑛太さんが運転する車で、皆んなで美ら海水族館へとやって来た。
朝早くに別荘を出たのに、結構な人だかり。
夏休みだから当たり前なんだろうけど。
「じゃあ、16時集合ね~」
「「は~い」」
千穂さんのかけ声に絢とゆずは可愛らしく返事をする。
「これがチケットで、こっちがお祝いね」
「えっ、いいですよ、瑛太さん」
「いいのいいの、気にしないで」
「でも……」
「1周年なんでしょ?こういう時は黙って受け取るもんだよ」
「………すみません、有難うございます」
ユウから聞いたのだろうけど、
絢たちに気付かれないようにポチ袋を手渡されてしまった。
「彼女に何かいい物でも買ってあげて」
「ありがとうございます」
「じゃあ、16時にここで」
「はい」
建設会社の専務というだけあって、
日に焼けてて、長身なワイルドさが際立ってて。
男の俺が見ても、カッコいいと思ってしまった。
「慧、良かったな」
「なんか、気遣わせちゃったな」
「いいんじゃね?金持ってるし」
「フッ、そういう問題じゃねぇって」
「じゃあ、俺らも行くな~」
「おぅ」
ユウはゆずちゃんと手を繋いで、フロアガイドを見に行った。
「絢」
「慧くん、混んでるけど平気?」
「ん、大丈夫」
人混みが嫌いな俺の顔色を窺う絢。
そんな彼女の手を掴み、笑顔を向ける。
「よし、どこから廻ろうか」
「端から網羅しようよっ」
「欲張りだな」
「せっかく来たんだし!」
「フッ、よーし!全制覇だ~」
麦わら帽子を手で押さえる絢の手を引き、入口のゲートをくぐった。