ブラック王子に狙われて②
ゆっくりと顔を上げた彼女は、潤んだ瞳で俺を捉えた。
「この旅行、計画してくれたの、慧くんなんだね」
「……何で知ってんの?」
「さっき、ゆずからメール来たから」
「そっか」
「色々と考えてくれて、ありがとう」
「どう致しまして」
「すっかり忘れたというか、私は去年の体育祭の時からかと思ってたから」
「ん」
「何も用意してなくてごめんなさい」
「別にいいよ、気にしなくて」
確かに絢が言うように、正式に付き合いだしたのは
体育祭の時だと言えば、そうなのかもしれないけれど。
でも、年に二度あってもよくね?
誰が一度だって決めたんだよ。
記念日が嫌いなやつもいるかもだけど、
俺は二回あってもいいと思ってる。
だって、絢が嬉しそうにしてくれるなら
何度だって喜ばせてあげたいから。
「じゃあ、8月7日と10月19日ってことで」
「え?」
「記念日。両方祝ったらいいんじゃね?」
「フフッ、……うん」
「キスしたら怒る?」
「……いいよ/////」
「じゃあ、その先は?」
「っ//////聞かないでっ//////」