キミの好きなところ。
 

――連れてこられたのは職員室。
先生はデスクからプリントの束を取った。

「プリント、配っておいて」

そう言って、渡される紙の束。
昨日の小テストだ。

「あ、はい…。でも、どうして私に…」

私じゃなくても良くない?
友達もいたのに…

…なんて思いつつ、本当は嬉しかったりするんだ。
私の名前を呼んでもらえたこと。

「…何となく。」

「はぁ…ですか」

すぐに、私から反らされる、先生の目線。
そして、私に向けられる、先生の背中。

……そんなものだよね。
期待することなんて、何もないのに。
私は全く相手にされてないんだから。

でもね、私は先生のことが大好きなの。
名前を呼ばれただけで喜んでしまうくらい。
…今すぐ、触れたいくらい。

「…戻ります」

「あぁ、よろしく」

…振り返ってもくれない。
私は先生の背中に視線を落としてから、その場を去った。

―――抱きつきたい衝動を抑えて。


 
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