恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「父さんが転勤族でさ。だから、転校なんて当たり前で、いつものことだっていう感じしかしなかった。」
「今回の転校の理由もそう。ここから大分離れた地方に転勤だって。」
私達は、まだ親の保護を受けないと、生活することのできない子どもだ。
だから、望まない転校も受け入れないといけない。
「いつか、転校しないといけないっていうのはわかってた。きっと、卒業までこの高校にいられないってこともわかってた。」
でも、私達は、親に何かを言われないと動くことができない程、子どもじゃない。
自分で決めて、自分で考えて、自分で動くことができる。
「だから、俺は『クラスのムードメーカー』になることを決めたんだ。バカなことやって、皆を笑わせて、全員と浅く広く関係を持って、別れた時の悲しみから自分を守る為に。」
成瀬君は、別れの悲しさから身を守る為に、「特定の誰か」と深い関係を持つことを避けて、「全員」と浅い関係を持った。
浅ければ、その人の記憶には残らないから。
例え残ったとしても、すぐに忘れ去られるから。
「1人には、なれなかった。1人でやっていけるほど強くはないし、1人ぼっちになる寂しさを知っていたから。」
成瀬君はポケットに手を入れて携帯を取り出した。パチンと音を立てて携帯が開かれる。