恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「ごめん。ちょっと、借りるね。」
そう言って私は、成瀬君の手に握られている携帯を、自分の手へと持っていく。
自分の携帯に成瀬君のメアドと電話番号を入力して、自分の電話番号をメールで成瀬君へと送った。
少し強引かなと思ったけれども、今の成瀬君にはこれくらいがちょうどいいかなとも思った。
「約束ができなかったり、果たせなかったり、守れなかったりすることもあったと思う。」
成瀬君へ携帯を返す。無機質な着信音が響いて、私のメールが届いたことを知らせてくれる。
「でもね、そうなったら、また約束を作ればいいじゃない。別れて、約束が果たせなくなって、それで終わりじゃない。自分が望めば、いつだって繋がっていられるよ。」
そうだ。約束っていうのは作るもの。もし、守れなくなっても、果たせなくなっても、もう一度、やり直せばいい。
そして、いつかその約束が、果たされて、守られる時がくれば、それはどんなに嬉しいことだろう。
「だから、踊って思い出を作ろう。思い出があれば、次に繋げることがきっとできるから。」
下からは、フォークダンスの時に定番の音楽が絶えず流れていた。独特で、でも単調なあのリズム。
私は成瀬君の手をしっかり握って、屋上の柵から離れた。
時刻は7時50分。私が楽しみにしていた2人きりのダンスが50分遅れで始まろうとしていた。