恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~


私達を取り巻くのは、人ではなく、音と星。


音――――聞こえてくるのは下からの音楽と、ステップの時に靴とアスファルトが擦れる音のたった2つだけ。


星――――空に見えるのは満天の星空。1等星から6等星まで、いろんな明るさの星がキラキラ光って、まるで私達を祝福してくれているかのよう。


こんな綺麗で雰囲気の良い屋上の舞踏場で、成瀬君と2人きりで踊っているっていうのが信じられなくて、夢心地のまま、時間が過ぎていく。


お互いに言葉は無かった。いや、いらなかったと言った方が正しいかもしれない。


だって、表情を見ればわかる。2人とも、顔に表れているのは、照れと恥ずかしさが混じった喜びだけ。

それに、何度も同じステップを繰り返してるのに、ちっとも上手くなってない。


何故か?私達は「ダンス」ではなく、「2人で一緒にいる時間」を楽しんでいるから。

上手く踊る必要なんてこれっぽっちもない。


満たされた気持ちのまま、最後の1小節を終える。

今度の静寂は始まりではなく、終わりを告げるもの。この世界で、唯一感じていた温かさがそっと離れていく。
< 39 / 106 >

この作品をシェア

pagetop