恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
店外へ出ると、辺りは少しずつ暗くなってきていた。
後1時間程すれば、アクセサリーを売っている露店や、食べ物を売っている屋台は店じまいを始めるだろう。
「成瀬君の家ってどこにあるの?」
「ここの駅から1駅西に行った所。そこから徒歩3分のマンションだよ。」
あんまり立派とは言えないけど、と付け加えながら、ぽきっちょの袋を開ける。
「綾瀬はどの辺なんだ?歩いてきたってことは結構近くにあるんだろ?」
口にくわえながら、ぽりぽりと齧って短くしていく。小動物みたいで少し可愛いなと思ってしまった。
「ん~、こっから10分くらいの所にあるよ。商店街に近いから結構便利かもしれない。」
あんまり立派とは言えないけど、と付け加えながら、私も袋を開けてぽりぽり。
程よい甘さのチョコレートが口の中で溶けて、広がって、消える。やっぱりこのお菓子はチョコレート味が一番美味しい。
「いいよな、この街って。」
少し遠い目をして、成瀬君は静かに呟く。オレンジ色の夕陽が柔らかく包み込むように、成瀬君を染めていく。
「え?そうかなぁ?」
私は生まれてからずっとこの街で育ってきたから、そういう事を考えたことも無かった。