恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「雰囲気・・・と言ったらいいのかな?あったかいんだよ。人の活気が、騒がしいとかじゃなくて、心地良い感じがする。」
帰り道を急ぐ人。学校帰りに屋台で食べ物を買って、楽しそうに話しながら食べている中学生。露店で嬉しそうにアクセサリーを選んでいるカップル。
色んな人が色んな目的を持って、同じ場所に集まっている。もしかしたら、こういうのも「繋がり」と呼べるのかもしれない。
「ちょっと難しい言い方かもしれないけど、1枚の絵なんだよな。」
「1枚の絵?」
「そう。この風景も、今集まってるこの人達も、それぞれ独立してるようで、実はまとまって1つなんじゃないかって思う。まあ、そんな感じがするってだけなんだけど。」
照れを隠す為にほんのちょっぴり笑いを混ぜて、でも声色は真剣に。ちょっと詩的な感じの成瀬君の言葉が、私に届いてくる。
「成瀬君が言うなら、そうなのかもしれないね。だって、転校で色んな所を転々としてるんでしょう?きっと、この街には、他の所には無いあたたかさみたいなのがあるんだよ。」
私にはこの街と他の街とを比較したことがないから、わからないけど、成瀬君がどれだけ人と繋がっていたいのかっていうのは良く知っている。
だから、ちょっと抽象的な成瀬君の言葉も信じることができる。どうやら成瀬君はかなりの寂しがり屋みたい。
だって、こんな日常の風景にさえ「繋がり」を感じてしまうのだから。
「あやせ~、何笑ってんだよ。ちょっと言い方がキザだった?」
知らぬ間に笑いが漏れてしまったらしい。成瀬君が私の方を向いて頬を膨らませていた。
「違うよ~。ちょっと新発見しただけだってば。」
「その新発見は、俺にとってかなり恥ずかしいもののような気がするんだけど・・・」
「ほら見て!夕陽が凄い綺麗!!」
「そこまで華麗にスルーされると、感動を覚えることを、初めて知りました。」
2人笑い合いながら、同じ歩幅で、同じ速度で、ゆっくりと歩いていく。
でも、いくらゆっくりでも、時間は確実に進んでいるわけで。
成瀬君と別れる地点である、駅までの距離は確実に近付いていった。