恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「あ~重かったぁ!!」
食材がたっぷり入った袋を地面に置いて、駅の待合室に腰を下ろす成瀬君は、大分疲れているように見えた。
・・・とうとう着いてしまった。私と成瀬君が、2人でいられる終着点に。
私は私の家へ。成瀬君は成瀬君の家へ。ここから先は、お互いの目的地が違う場所になり、接点が無くなってしまう。
「お疲れ。うわ、ちょっと手が赤くなってるね。」
そんな焦りを顔に出さないように、声に出さないように、普段通りに振舞う。
でも、自分の気持ちを抑え込むっていうのは想像以上に難しくて、声がうわずってしまう。
「・・・」
2人とも上手く会話を続けることができない。2人きりの待合室に訪れる静かな時間は、心が安らぐというよりも、気まずい感じの雰囲気を作り出してしまう。
「ん?ちょっとゴメンな。」
気まずい雰囲気に似合わない明るめのメロディ。それは成瀬君の携帯から流れていたもので、携帯を持って待合室を出て行く。
ここからでは何を話しているのか、全然わからない。でも、成瀬君の表情は切羽詰まっていて、焦っているような印象を受けた。