恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「綾瀬は晩飯食った?・・・って食べてる訳ないよな。まだそんな時間でもないし。」
電話を終え、待合室に戻ってきた成瀬君は開口一番、そんなことを聞いてきた。
現在夕方の5時。夕食には早く、間食には遅い中途半端な時間帯だった。
「・・・もし綾瀬が良かったらなんだけどさ・・・」
そう言うと、成瀬君は、中身の無くなったぽきっちょの袋を私の目の前に持ってくる。
「え?このゴミを捨ててくればいいの?」
「いや、そうじゃなくて・・・その、晩飯食いにくるか?ぽきっちょのお礼ってことで。」
私の方から目を逸らしつつ、空っぽの袋を近くのゴミ箱に捨てて、まるで何も無い空間に話しかけるように、成瀬君がお誘いしてくる。
それが、ダンスの時、屋上で私の方を見てくれなかった時の「拒絶」ではなく、照れと恥ずかしさからきているものだと知った時、喜びと嬉しさで頭の中がいっぱいになった。
「・・・」
只今、頭の中がいっぱいになっており、唇を動かすことができません。復旧まで、もうしばらくお待ち下さい。
ぐー
ぐー?ぐーって何?
「良い返事をどうもありがとう。というわけで、母さんから頼まれたサラダ油を買ってくるから、ちょっとここで待ってて。」
返事をした覚えは無いのに、成瀬君は袋を置いていって、再びスーパーに戻る為に走っていった。
私は機械ではなく人間なのだから、勿論フリーズしている間にも、体は常に機能している訳で。
まあ、簡単に言ってしまえば、あの「ぐー」はお腹が鳴った音だったということ。
フリーズ状態だった私は一気にオーバーヒートへ。
言葉でOKするよりも素晴らしい返事をしてしまった私は、顔を真っ赤にしながらじっと成瀬君の帰りを待つことにした。
あのお腹の音をどうやって言い訳しようかな、なんてことを考えながら。