恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「あら?私、こんな可愛い娘を産んでたかしら?」
「そんなわけないだろ!お客様だってお客様!・・・まあ、上がってくれよ、綾瀬。」
成瀬君のお母さんのボケを軽くスルーして、成瀬君は、私を部屋へと招き入れてくれた。
成瀬君の言う通り、駅から3分程歩いた所にマンションを見つけることができた。2階の205号室が、扉を開けて私を待っている。
「あ、じゃあお邪魔しますね。」
ペコリとお母さんに頭を下げて、靴を脱いでフローリングの床を踏む。
家の中は小奇麗に片付けられていて、大抵の物はダンボールの中に収められて、まとめられていた。
「何も無くてごめんなさいね。明日引っ越してしまうものだから、無いと困るものしか置いていないの。」
「いえ、そんな・・・気にしなくてもいいですから。」
「進からお客様が来るって聞いてたんだけど、まさかこんな可愛い子なんて・・・」
ねぇ?と言いながら、成瀬君の方をじっと見る。それは、もうヘビのようにじっとりと。
「い、いいだろ別に!!それより晩飯、晩飯。あー腹減ったなぁ。」
ヘビに睨まれたカエル、もとい成瀬君は、何とかこの場を逃げることに成功したらしい。
袋を持ってドタドタと荒々しく、奥に入っていく。
「ちょっと待っててね。お茶とお茶菓子持ってくるから。そこの椅子に座ってて。」
そう言うと、お母さんも成瀬君の後に続くように、台所へと消えていった。