恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「ところで、進。おつかいに行ってもらったわけだけど、お釣り出なかった?」
ぽりぽりぽり
「ん。」
「って、おせんべいを渡しても騙されないわよ。まあ、食べるけどね。」
ぽりぽりぽり
「母さんの突然の追加注文に、逆に俺がお金払ったんだけど。その分お小遣いに追加しておいてくれよ?」
ぽりぽりぽり・・・ぽり
「さ、晩御飯作らなきゃね。今日は天ぷらだから、すぐ食べられると思うわ、綾瀬さん。」
「なあ?今の明らかに聞こえてただろ?」
「進は海老の殻むきと、ピーマンの種取りね。手伝ってくれたら、ちゃんと払ってあげるから。」
「くそぅ。貧乏暇無しってことか。というわけで、1人にして悪いけど、しばらく待っててくれ。下ごしらえが終わったら、戻ってくるから。」
返事をする前に、成瀬君とお母さんは台所へと戻っていった。私は、広いテーブルに1人ポツンと取り残される。
「何か台風が過ぎ去った後みたい。」
ようやく、お母さん自慢のおせんべいに手を伸ばすことができた。
お母さんのペースに呑まれて喋ることさえできなかったけど、話を聞いてるだけでも、十分に楽しくて、1人になってもその余韻が残っている。
「これ、おいし。成瀬君早く戻ってこないかなぁ。」
晩御飯が始まるまでのちょっぴりの寂しさを、おせんべいと一緒に噛み砕いて、遠くから聞こえてくる車の音や、外で遊んでいた子ども達の声をぼんやりと聞いていた。