恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
静寂から一転、教室が一気に騒がしくなる。
「何で?」と「どうして?」が教室中を飛び交った。
「あーー、静かにしろ。質問は後で成瀬君するように。」
先生の一声で、教室は静けさを取り戻した。
全員が先生の方を向いて、次の言葉を待っている。
「転校は一週間後だ。文化祭が終わって、振り替え休日を挟んだ次の日だな。」
たった一週間しか、私に時間は残されていなかった。
卒業までの1年半は一緒に居られると思っていたのに
そんなの急すぎるよ。
どうしろっていうの?
「ホームルームは以上だ。次の授業の準備しとけよ。」
先生は出席簿を持って、教室を後にした。
と言っても、一時間目が英語だから、すぐに戻ってくるだろう。
担任の宮本先生は、英語の教師でもある。
止まった時が動きだすように、教室がまた活気を取り戻す。
成瀬君が、クラスメイトに質問責めにあっている。
質問の内容は皆同じ。「どうして転校するの?」だ。
成瀬君の後ろに居る私は聞き耳を立てていたが、
成瀬君は苦笑いしながら「何でもないよ」とお茶を濁すだけだった。
これが、火曜日の1時間目の始まる5分前の出来事。
焦りと混乱で乱れた心を、短時間で立て直せる程、私は強くなくて。
頭の中に入っていた英文法は、成瀬君の事であっという間に塗り潰された。