恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~

「だから、頑張りなさい、『灰かぶり姫』さん。今は上手くいってなくて、『不幸』かもしれないけど、逃げずに頑張ればきっと『幸せ』になれるから。」


お茶目に私に向けてウインクしてくる。颯爽と台所に向かっていく姿は、ファッションショーで後ろを向いて去っていく、トップモデルみたいに格好よく見えた。


「あの、すいません。」


無意識の内に呼び止めてしまっていた。この人なら、今の私が抱えている問題全てを解決してくれる気がしたから。


「自分1人ではどうしようもない時には、一体どうすればいいんですか?」


お母さんはしばらく、う~んと唸って考え込む。


「そうね~、『魔女』を探しなさい。あの物語は魔女がいたから、最後まで続けることができた。これが、どういう意味かわかる?」


わからないと言って、首を振る。一体どういう意味なんだろう?


「自分1人だけでは絶対に幸せになれないということよ。童話は短くて、子ども向けかもしれないけれど、本当に大切なことを私達に教えてくれるわね。」


「・・・まぁ、そこで呆然としてる、冴えない顔した私の息子が、王子様とはとても思えないけど。」


あははと笑いながら、再び台所へ消えていった。全てお見通しのお母さんに、私達は反論することもできず、2人で顔を真っ赤にしながら、冷め切った天ぷらを口に運んだ。

恥ずかしさを誤魔化す為に食べた天ぷらは、どんな味がしたのかなんてさっぱりわからなかった。
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