恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「ありがとう、成瀬君。送ってもらっちゃって。」
9月の終わり頃というのは、まだ日中の暑さが夏のようなのに、夜になると急激に寒くなるという、なんとも厄介な時期だ。
「いいよ。帰る途中で誰かに襲われたりでもしたら、大変だしな。」
駅までの短い道のりを、2人で静かに歩いていく。この辺りは街灯の数も比較的多く、時々2人の顔を明るく照らしていた。
「その、悪かったな。ちょっと母さんが弾けすぎちゃってさ。」
いつも、あんな感じでテンション高いんだけど、と付け加えると、成瀬君は道端に転がっている石を蹴飛ばした。コロコロ転がって、闇の中に消えていく。
「そう?私は結構楽しかったよ?成瀬君のお母さんは、本が好きなの?」
「本といっても、絵本と童話ばっかり。小説は、読むの面倒なんだってさ。ホント子どもみたいな人だよ。」
成瀬君が蹴った石は、私の足元へ。蹴り返すような形で、成瀬君へとパスを送る。
この石の蹴り合いが続けば、私と成瀬君の会話も続けることができると思いながら。
「やっぱり、屋上で踊ったのはマズかったなぁ。キャンプファイアーの灰が降ってくるなんて、考えてもなかったよ。」
「あはは。やっぱり踊るなら、屋内だね。でも、広くて誰にもぶつかる心配がなかった点では良かったんじゃない?」
「そうだな。2人とも、ちっとも上手くなかったし。よろけて、足踏んだりして・・・まさに踏んだり蹴ったりだったな。」
石の蹴り合いが数回続いた後、成瀬君の足元で石が止まる。
見上げると、もう駅に着いていた。