恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「駅、着いたよ。」
「うん・・・」
2人とも、駅の入り口で立ち止まる。時折通る車のヘッドライトが、撫でるように2人の顔を浮かびあがらせた。
2人を邪魔するものなんて、何も無い。雨も降っていないし、花火もあがっていない。
なら、告白できるはず。自分の気持ちを口に出して、ただ成瀬君に伝えるだけでいい。
「・・・」
でも、言葉は出なかった。
何でこんな簡単な事ができないの?(自分の気持ちがわからない)
言えないって事は、本当は好きじゃない?(ううん、好き。)
じゃあ、どうして、どうしてなの?(・・・わからない)
「どうしたの綾瀬?もう駅に着いたよ?」
動かない、喋りもしない私を心配してくれたのだろう。成瀬君が声を掛けてくる。
「・・・」
私は答えない。何か返事をしてしまうと、そこでお別れになってしまいそうだったから。
今、ここで告白しないと、もう成瀬君の顔を見て告白することはできない。だって明日には転校して遠くへ行ってしまう。
もう1度、もう1度だ。息を大きく吸い込み、自分の心を整理し直す。次はきっと言えると信じて・・・
「・・・・・・」
それでも言えなかった。どうしてなのか自分でもわからない苛立ちと、告白できない情けなさに涙が溢れそうだった。