恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
「文化祭お疲れさん。このクラスで出店した焼きソバ屋は、用意した300食を全て売り切って、ジュースの売り上げも合わせて、10万近い売り上げを達成したぞ。」
皆が驚き半分と、喜び半分の声を出す。全員の頑張りが、結果として出たことに私も嬉しくなって、ついつい顔が喜びの表情を作ってしまっていた。
でも、前の席に座っている筈の人は、もういない。
本当なら、皆と一緒にこの事を喜べているはずなのに・・・。はっきりと見える黒板が、強引にその事実を私に突きつける。
「これも、全員が1パックずつ買ってくれたおかげだ。本当にありがとうな。・・・この団結力を是非、俺の授業でも発揮してくれ。というわけで、授業はじめるぞ~。」
『え~~~!!』
皆が悲しみ半分、がっかり半分の声を出す。
「いや、もう9時だから授業始まってるって。じゃ、出席とるぞ~、相川。」
・・・授業が始まってしまった。先生だって皆だって、もっともっと成瀬君の事を気にしてくれてもいいはずなのに。
だけど、これは自分勝手な感情だってわかっている。高校生にもなって、わざわざホームルームで成瀬君の転校の事を皆で悲しむ必要も無いし、皆でお別れ会を開くのも小学生までだ。
「浅上、安達・・・」
出席確認は続いていく。ミィが言ってた『魔法』って一体何なの?2人きりで告白させてあげるって言ってたけど、成瀬君は学校には来ていなかった。
「綾瀬、綾瀬?・・・いないのか?」
「あ、はい。はーい。」
名前が呼ばれたことに気付いて、返事をする。
私の席は、前から2番目。先生のいる教卓からは決して遠くない距離だ。それなのに先生は、まるで聞こえていないかのように首を傾げて、
「なんだ?綾瀬は今日来ていないのか?」
なんて、意味不明な言葉を発し始めた。