恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
魔女の魔法?
「い、いや、ここにいますってば。はいはいは~い。」
手を挙げて、声を上げての全力の自己主張。でも、そんな私の全力の自己主張は、
「宮本せんせーい。綾瀬さんは9時から9時50分までの間『だけ』いなくなるそうで~す。」
クラスメイトの声に掻き消される。それも、やっぱり意味不明だった。
「ね?知ってる?成瀬君ってさ、今日の9時半ちょうどに発車する電車に乗るんだってさ。」
「うん。知ってる知ってる。あの商店街の近くにある駅だよね?確か、1番のりばだったっけ?」
「ちげーよ。2番のりばだって。あそこの駅は、1番のりばと、2番のりばが隣接してるから間違いやすいんだよ。案内板もないしな。」
途端に教室中がざわめき出す。今は授業中なのに、普通なら私語は厳禁のはずなのに。
なのに、宮本先生は注意せず、何も喋らない。・・・よく見ると小さく笑っていた。
トントンと肩を後ろから叩かれる。後ろを振り向くと、ミィが手を合わせてごめんなさいをするポーズで、
「ごめんっ!コト!私、魔女みたいに魔法使えないから、皆の力を借りちゃった!」
私に向かって、魔法が使えなかったこと、自分は魔女なんかじゃなくて、ただの人間だということを素直に白状した。
「ううん。ありがとう。立派で、凄い魔法だよ。」
クラスの皆が50分間だけ、私を『いるけど、いないことにしてくれる』。
それがミィの使った魔法だった。