恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~
でも、この魔法は『使う人』だけじゃなく、『魔法にかかる人』も絶対に必要な魔法で。
「どうして、皆が?」
「電話が終わった後、何とかしたいと思って友達に電話かけてたら、こうなっちゃって・・・私もここまでになるとは思ってなかった。」
恋する乙女の初恋話は、光の速さよりも速く、人から人へと伝わって。
「成瀬君の番号知ってる男子達が、今日の何時に出発するのか聞いてくれたんだよ。後、どの駅から電車に乗るのかっていうことも。」
気が付けば、クラス全員が魔法にかかっていた。
たった1人の、いつまでたっても勇気の出せない『灰かぶり姫』の為に。
「時間を聞き出したら、朝の9時半だって言うじゃない?ここで、女子の出番ってなワケ。宮本先生は、可愛い女の子に弱いから、今日、廊下で待ち伏せしてお願いしたら3秒でOKくれたよ。」
「ね?皆の声聞こえてるでしょう?これ、皆で集めた大事な情報なんだから、聞き逃しちゃダメだよ?」
ざわめきに耳を傾ける。さっき聞こえた時間と場所の他に、この道を通った方が早く着けるとか、ここは工事中だからタイムロスになるとか、目的地までの最短ルートを私に教えてくれていた。
「どう?コト?『繋がる』って凄いよね?こんな魔法みたいなことだってできちゃう。さてと、今度はコトが頑張る番だよ?」
後押しするように、背中をバシンと叩く。ジンジンして痛かったけど、頑張れっていう励ましも痛い程伝わってきたから、その嬉しさであんまり気にならなかった。
今のバシンって音が、魔法が解ける鍵になっていたのだろうか。皆が一斉に私の方を振り向いた。